スノーモービルはGPレーサー

スノーモービルはGPレーサー

freddebackman / ※写真はイメージです

むかし、北海道道東のスキー場で6シーズン働いてました。ぼくのポジションは山頂駅の監視でしたが、スノーモービルが楽しかったなあ。で、そのことをちょっと。

開業前にスノーモービルでゲレンデの点検をするのは山頂の人間と決まっていたので、朝からの勤務のときはいつもスノモに乗ってました。ぼくはそれまで乗ったことがなかったのだけれど、バイクには乗ってたのですぐ慣れました。

バイクとのいちばんの違いは、スロットルがレバーになってること。三輪バギーと同じで、右グリップについてる小さなレバーを親指で操作します。これはたぶん、グリップにしがみつかなきゃいけないようなシチュエーションがけっこうあり、バイクみたいなスロットルだとコントロール不能になっちゃうからだと思います。

あとは曲がり方ですね。スノモは硬いゲレンデ(圧雪車が踏み固めるのでこうなります)の上ではバイクみたいに傾かないので、リーン・インしないと曲がってくれません。カラダをカーブの内側に落とすみたいにするのです。オートバイGPみたいに。スピードの遅いときはハンドルも使いますが、体重移動で曲がるほうがスムーズです。

スノモは前輪にあたるソリが2本ついてます。このソリは接地断面がV字型をしていて、方向を決める重要なパーツです。一度、この部分に氷のカタマリが固着してたことがあって、それを知らずにスタートしたら、もうほとんど舵のない船状態。あやうくゲレンデ脇の木にぶつかりそうになりました。

ラグナ・セカのコークスクリューを通過する巨摩グンのように(たとえが古すぎるのお)うしろの駆動輪だけで方向転換すればダイジョーブなんだが、そんなことできるわけないっしょ。減速でなんとかかわしましたがマジ危なかった。

・・・かめっ。

前日が暖かかったもんで、スノモのガレージの下の雪が融けて水になり、それが朝の冷え込みで凍ってソリに付着してたというわけです。この氷をポンポンとたたいて落としたらバッチリでしたが、なにがどうなってるかわからないとあわてるものですね。死ぬかと思ったわ、ホント。

そのスキー場で使ってたのは、けっこう古い型の空冷ツーサイクル550CC(くらいだったと思いますが、もっと大きかったかも)エンジンのヤマハのマシンで、オートマ。これがスロットル全開だと速いのなんの。キーンという、むかしのモトクロッサーみたいな排気音でぶっとびます。フロントのカバーを開けてみると排気系がぐねぐねうねったチャンバータイプ。ほとんどレーサーです。ひょっとしてTZ直系のエンジン?

最近のエンジンは自然保護のため(?)フォーサイクルが主流になってきてるので、こういうツーサイクルエンジンの加速には忘れかけてたものを呼び覚ましてくれるものがあります。おおむかしにGT380というツーサイクルエンジンのバイクに乗ってたのですが、加速感はそれ以上です。

ちょっとした段差があるとけっこうな距離をジャンプ。サスペンションがいいので危うい感じはなし。そのむかし、DT125というバイクで草レースに出たらジャンプの着地でサスがガツンガツン底づきしてナンバープレートが真っ二つにちぎれたことがありました。今思い出しましたが。

下駅から山頂駅まで500メートルくらいあるのですが、15秒もかからなかったような・・・もちろん、遊びじゃないので行って来てオシマイなんですが。

山頂にスノモで登るのは、始業点検をしないうちにリフトを動かしてはいけない決まりになってるからです。で、駅の点検や除雪が終わったら、リフトの真下に道をつける作業があります。これは、営業中に緊急事態でスタッフがすばやく山頂駅に来るのにゲレンデをスノモで走るのを避けるため、お客さんが滑ってはいけないことにしているリフト下を「通路」として使うということです。

この作業はスノモで行ったり来たりして踏み固める必要があって、ぼくはほとんど上から降りて道をつけてました。ドカ雪の次の日はスノモがほとんど見えなくなるくらい深い雪のなかをくだっていくので、なかなか楽しいものでした。

ほかの若いスタッフのなかには、下からリフト下を登ってこの道をつけようという猛者がたまにいました。かれらは新雪のなかで立ち往生することがあって、そうするともう大変。動かなくなったスノモはチョー重く、ひとりで向きを変えるのにはずいぶんな汗を流す必要があります。ぼくは行けるときはヘルプに出ましたが、持ち場を外せないときは見てるだけ・・・

ぼくも新雪にはまったことがあって、何度か地獄を見てます。そんなに積もってないだろうと踏んで入っていってみたら底なし沼のような吹きだまりでエンジンストップ。開業の時刻は迫るしモービルは重いばっかりでなかなか向きをかえてくれないし、だれも気づいてくれないし。やっと脱出できたのはいいけど、営業を始める前にもうカラダもこころもボロボロに。

スノーモービルは新車だと最低でも100万以上します。保安部品がないのでナンバーが取れず、公道を走れません。運ぶのには車検の必要なトレーラーか大きなワンボックスカーを手に入れる必要もあります。コストがかかりすぎるので、お金がたくさん余ってないと買えません。ぼくにはぜったいムリ。そんな熱意もないし。

だから、経験としては貴重なものでした。まさに、お金では買えない。それにしても、あの加速。いつか、また。

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