思い出を釣る川

この川では、30年近く前から楽しい釣りをさせてもらってきた。ずい分前に河道をまっすぐにされてしまっている川だが、増水でときおりできる深みに魚がたまるのだ。

◇この緑色に見える深みがこの川のポイントの特徴。かつてなら、泉のように魚が出てきた。今回は、このポイントは不発。底が泥っぽいので魚が嫌うのかもしれない。【直十(c)】

同じポイントから5尾ぐらいはいつも出てくれるのだった。しかもいい型ばかり。50センチが出て45センチが出て、35センチ、30センチ…という具合に。しかも、頭部が小さく背中が盛り上がっている、大食漢の体型ぞろい。

いつ行っても満足できる釣果を与えてくれる、素敵な川だった。

ところが、8年ほど前から上流部で川がひどくいじられるようになり、何の目的なのか堰堤まで造られてしまった。この結果、虹鱒の影は極端に薄くなった。あれほど豊穣だったこの川は、いつ行っても釣れない川になってしまった。

◇このように木がおおいかぶさっている時には魚が付きやすい。きのう、ここから下の写真の魚が出た。流れ込みの白泡が消えるあたりから予想通りに出て、予想外に良いファイトを見せてくれた。【直十(c)】

それでも、いい思い出がたくさん焼き付いているものだから、ひょっとして流れが変わって新しい深みができてるんじゃないか、と思ってまた来てしまう。

魚は、昔日のようには釣れず、それでも昔いい釣りをしたポイントのあたりを歩いていると、

(ああ、ここであの魚が来たんだった……)

などと思い出にひたって足が止まるのも、しばしばで。悲しくて。

そして、たいていはひどく疲れて、落胆して帰途につくのだ。

◇ランディングネットはオリジナル。5ミリ径の古ワイヤを曲げて成形して、コルク栓をサンドして真鍮ワイヤで固定したもの。網はタコ糸で手編みして、コーヒー殻で染色。網が深いので60センチの魚も余裕ですくえる。しかも軽量。調子づいて、これ以外にもう一個作ってしまった。【直十(c)】

それでも毎年、ぼくは必ずこの川に来る。

ひょっとして生き返ってるんじゃないか、そう思いながら。

たぶん、来年も。

◇幼い顔だが、素晴らしいジャンプを4度見せてくれた。【直十(c)】

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