エゾシカは道路交通法を知らない

エゾシカは道路交通法を知らない

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【 北海道の先住民、エゾシカ 】

北海道の一般道には多くの危険が潜んでいる。

そのひとつはエゾシカの存在だ。このシカは北海道に多く棲息していて、たびたび道路を横切る。横切りきらずに、道路の真ん中でたたずんでいるときもある。ファミリーの場合は3頭くらいが行動をともにするので、道路がふさがっているときもある。とくに出やすいのは、夕方から明け方まで。でも、もちろん、昼でも出てくるときがある。

山岳部は当然だが、平地でも酪農地帯ではとくに気をつける必要がある。畑作地域の場合は、食害を防止するための【シカ柵】を執拗に山と畑の境目に設置するものなので、ほとんどシカは道路には出てこない。だが、酪農地域では、シカ柵の設置はほとんどない(シカは牧草地には害を与えないため)

道路に出てきたシカは、クルマを発見しても「きょとん…」として、じっとしたままこちらを見つめるだけ。クルマを見たら一目散に逃げる、という行動はとらないのが普通だ。

クルマはなんかコワイものなんだぞ、という意味で、クラクションを鳴らして脅かすのがいいとぼくは考えている。そうでないと、またなにげなく道路に出てしまい、悲劇につながる。

不運にもシカをクルマではねてしまっても、エゾシカは天然記念物でもなんでもない(冬には猟の対象になるくらい多い)ので、警察に届け出る必要はない。道路管理者に届け出るのは、もちろんいいことだが。

それより問題なのは、クルマが壊れることだ。ぼくが前に働いていたスキー場の同僚は、シカとぶつかってクルマが廃車に追いこまれた、とのこと。泣くしかない。

ぶつからないように、スピードは控えめに。これは単なるスローガンではない。身を守る術だ。

もし万が一シカが本当に出てきたら、できるだけ減速で対処するのがいい。ハンドルを切った結果、道路外に転落したりするとオオゴトになってしまうので、止まれないときは残念だがシカをはねるしかない。これはキツネでも猫でもクマでも同じ。残念だが…

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【 シカとオートバイ 】

当地ではオートバイの単独事故が多く、事故った人が死んでしまったりすると、事故原因がわからないままだ。でもぼくは、ほとんどはシカを避けようとして起きた事故だと思っている。

北海道の広くてまっすぐな道路なら、そして、スピードの出るマシンに乗っているのなら当然そのポテンシャルを試してみたくなる。どんだけ出るんだろう、と。そこにシカがあらわれたら、避けることも、はねておいて平気でいることもできない。

エゾシカは思っているより質量が大きいので、オートバイがシカとぶつかったら、ライダーはまちがいなく一本背負いのように何十メートルも飛ばされることになる。たとえば150キロのスピードでぶつかったら、ライダーは慣性の法則で、同じ速度で飛んでいくことになる。

静止した大きな物体(シカ)との接触は大きなダメージを生んでしまう。先住民であるエゾシカは、どこを歩こうと勝手だし自由だ。道路のほうがあとからできたんだから、ね。

というわけで、北海道でマシンのポテンシャルを試すのは、かなりの危険と隣りあわせだということは忘れないほうがいい。そうでないと、すべてを失う可能性がある。

【 安全な走り方 】

畑作地域ではあまり気にすることはないが、牛を飼っている牧場が多い土地を走っているときは注意するに越したことはない。特に、ケモノの行動が活発化する朝晩や夜は法定速度の60キロをキープするほうがいい。

このスピードで追い越し禁止の道路を走っていると、かなりの確率で後続車のドライバーがイライラする。バックミラーはコマメにチェックして、そんな感じで車間距離をつめてくるようなら、直線部分でウインカーを出して左に寄って追い越させる。パーキング帯があるようなら、いったん入るのもいい。

自分のペースで走るのはいいが、後ろの人に迷惑はかけたくないとぼくは思う。日本のドライバーはスピード違反は簡単にやるのに、追い越し禁止には違反しないものだからだ。

先導車を立てるのもいい方法だ。手頃なスピードで走っているクルマやトラックをみつけたら、自分が後ろを走っているのならそのままついていく。後ろから手頃そうなクルマがついてきていたら、ウインカーを出して左に寄って追い越させ、あまり接近せずに追尾する。

「バンパー」役を前のクルマにやってもらう、というわけ。べつに、そのクルマをおとしいれる意図はなく、これは「公道を走るテクニック」のひとつにすぎない。自分のクルマがシカよけのバンパーにさせられているなどと考えるドライバーは、まず、いないだろう。

「動物注意」の黄色いシカの道路標識が立っていたら、たいていはそこで過去にシカとの事故があったシルシだ。これを立てる場所の選択にはちゃんと理由がある(と思う)

林の中で、交差する道路や家もないのに黒いブレーキ痕が目立つようなら、きっとシカが出てきたポイントである。これも要注意なサインである。

シカは林を切れ目なく移動したがる動物なので、両側が防風林ではさまれている道路を走るときは要注意。シカが道路を渡って向こう側の防風林に向かう可能性がある。畑地でも、防風林が道路をまたぐように植えてあるところは多い。

シカもまた、歩きやすいところを歩く。アスファルト道路に砂利道がぶつかるような場所では、砂利道を歩いてきたシカがそのままアスファルト道路に出てくる。彼らは道路交通法を知らないので、(たぶん)一時停止はしないだろう。

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