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今までの生を終えて、別なかたちで生きる。
生きるものを「養生」する役割を担うことから、森の倒木のことを、英語圏では「ナースログ(nurse-log)」と呼ぶことがあります。
それは物知りの古老のようなもの。
かれに導かれるままに、しかも、道具としての機能をより高めるように、かたちづくる。
古木のいのちが新しい使い手の幸せを呼ぶように。
そんなリレーのはじめの一歩。
それが「ナース・ログproject」です。

      スプーン   

  ナース・ログprojectの特徴

    ツール・焼き印 


◆ここでご紹介している作品は、ほんの一例です。まったく違うコンセプト、形状のものもありますのでお店でお確かめください。
◆工程上同じものは作れませんので、すべての作品はオンリーワンです。







@ダブルスプーン
すくう部分が両方についたスプーンです。焼き印が入っている側のほうが少なくすくえます。
対象は砂糖や塩、片栗粉などの粉、インスタントコーヒーや茶葉など。
材の形状から、できあがりはひねりの入ったものになり、結果的に右手用になりました。左手で持つと水平が保てず、粉がこぼれやすくなります。
[ 全長135mm・イチイ解体廃材使用・ウレタン塗装 ]





@深めのダブルスプーン
すこし深めのダブルスプーンです。これも結果的にひねりが入って左手用になりました。右手だと使いづらいのです。
[ 全長118mm・イチイ解体廃材使用・ウレタン塗装 ]




@自立するスプーン
自分で立つことのできるスプーンです。キッチンテーブルや棚の上にいつも立てておけば、思い立ったらすぐ使えます。
いちいち引き出しからスプーンをごそごそ出してくるのがかったるいので、作ってみました。
もっと背の高い自立型スプーンの場合、底部にオモリをはめこんで安定を良くしたバージョンもあります。
[ 全長73mmと100mm・イチイ解体廃材使用・ウレタン塗装 ]




@楢のスプーン
楢材は硬いので、手彫りでは削るのがたいへんです。たいへんですが、硬い分、軸の細いデザインが可能になります。
硬い材は仕上がりに重厚感が出ますから、汁ものを扱わなければ一生モノになりうると思います。木質は塗装の膜があっても水や洗剤に弱いので、できるだけ洗わないで済むような用途がおススメです。
[ 全長179mm・楢解体廃材使用・ウレタン塗装 ]



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@楢のスプーン
スプーンのくぼみを彫るのには、彫刻刀の丸刀を使います。以前はドリルで大まかに穴をあけてから削っていましたが、途中で路線変更したくなったものの、あけた穴がネックになってかなわなくなって、それ以来、ドリルを使うのはやめました。
[ 全長188mm・楢解体廃材使用・ウレタン塗装 ]





@イチイのカレースプーン
イチイのやさしい質感を味わっていただける、カレースプーンです。
イチイは材が柔らかいので、塗膜がはがれるとイタみが早くなります。
塗膜がはがれてきたら、よく乾燥させて、クルミの食べる部分をこすりつけてクルミオイルを染みこませ、金属製のスプーン凸部でこすると簡単に応急の手当ができます。クルミオイルは「乾性油」で、固まる性質があるので補修に向いています。サラダ油やオリーブオイル、ごま油などはべたつきがいつまでも続くのでこの用途には使えません。
[ 全長241mm・イチイ解体廃材使用・ウレタン塗装 ]





@赤い匙
赤い色をした解体廃材で、樹種は不明です。まるで柿渋で塗装したように赤いですが、透明なウレタン塗料を使っています。
[ 全長166mm・解体廃材使用・ウレタン塗装 ]

        


        

@コーヒー粉スプーン
このサイズのスプーンは、レギュラーコーヒーの粉を扱うのに適しています。
とはいっても計量スプーンではありませんので、「アバウト」にしかすくえません。「大さじ」(15cc)とか「小さじ」(5cc)をちゃんと計れるスプーンを作ろうとあれこれやってみたことがありますが、たいへんすぎてあきらめました。
桜木はどちらかというと硬い部類で、しかも虫食いが入っていることが多くて、なかなか使いにくいものです。でも質感に高級感があるので、使いたい材です。
削り屑は、燻製を作るのに使います。なにもムダにならない材です。
[ 全長173mm最大幅52mm・桜倒木使用・ウレタン塗装 ]





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◎ 特徴 ◎

★民家などの解体廃材や倒木、流木の中から、用途に適したものを選んで材料にしています。
解体廃材はほとんどの場合、年月を経ているために完全に乾燥しています。
生木の場合は乾燥のプロセスにともなって、材の狂いやひび割れが必ず生じますが、解体廃材の場合はこの問題を考慮に入れる必要はほとんどありません。
硬い材は木べらや皿などに、柔らかい材はスプーンやバターナイフなどに使います。ナラ材はどちらかというと硬い材ですが、作品にすると「風格」のようなものが出るのでこのかぎりではありません。

★機械をできるだけ使わない「手彫り」で、古木材のキズや風合いをあえて消さず、製品の「景色」としていかしています。
「エイジング」という観点からいえば、解体廃材はまさに「エイジング済み」の材料といえます。直十では、わざわざとってつけたような「エイジング」ではなく、実際に年月を経てはじめて出る味を活かしたいと考えています。

★それぞれの材の個性(ナタで割ったときの割れ具合、硬軟の分布や虫食いの状況、木目や節目など)にあわせて形状を少しずつ決めていきますので、一品ごとに独自の形状になっていきます。
手彫りなので、材料のクセに逆らうとうまく彫れません。柔らかい部分は材が「ここを彫るように」と、逆目の部分は「彫るな」と言っていると解釈します。そのように、材の指示に出くわした場合は従うようにしています。
したがって、同じ木がひとつもないように、すべての作品は世界中にひとつだけしかありません。

★材の指示の結果として、「右利き用」と「左利き用」、「どちらでも」ができあがります。
※ラベルに表示しています。「どちらでも」は表示はありません。

★とっさの調理・食事行動にすばやく対応できる「エッジング」デザイン。ツールの傾きや方向を手の触感で感じとれます。
手で持ったときに、ツールの作用部分がどのようなポジションなのか感じ取れるかどうか、は、ツールを使う上でたいへん重要だと直十は考えています。
ですから、エッジをわざと残したデザインを多く採用しています。のっぺりとしたデザインだとグリップが悪いものです。
また、先端に重心があるツールは使いにくいので、箸と同様、先端は相対的にボリュームを小さく作るように心がけています。例外もありますが。

★フィニッシュは、耐久耐水性重視のウレタン塗装・風合い重視の柿渋仕上げ・無塗装などを設定しています。
木目を活かしたい材の場合は透明に仕上がるウレタン塗装を、木目に存在感がない材(イチイや白樺など)は柿渋で仕上げることもあります。柿渋を塗ると、どの材でも同じような質感になります。
使っているうちにヘリの部分の塗装が落ちてきますが、それと同時に愛着が湧いてくることがあるものです。
柿渋の塗膜は剥げやすいものです。あらかじめご了承ください。

★企画・デザイン・製作・ラッピングまで、すべての工程を直十が担当しています。


※このサイトでご紹介している作品は、直十が製作したもののほんの一例です。まったく違った形状・コンセプトのものもありますので、販売店でお確かめください。
※作品はすべてオンリーワンで、まったく同じものを作るのは工程上不可能です。ご了承ください。
※通信販売および受注製作は、おこなっておりません。




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■使っているツールについて

・マサカリ (薪を作るときに使うもので、柄のまっすぐな和物です)
・手斧 (荒削りには片刃のものを使います。弟子屈町川湯の木彫師が使っていたもので、使いやすいことこの上ない。魚の彫刻はこの手斧が導いてくれている感じです。
両刃のものは柄のカーブした洋物で、ハンマーとともに材を割るのに使います)
・オピネルのナイフ (フランス製のマキリで、25年くらい前のもの。細かく削るときに使います)
・彫刻刀 (スプーンやおたまのくぼみを彫るのに使います。この工程はなかなか楽しいので、つい削りすぎてしまいがちです。
表面に飾り彫りを入れるときにも。丸刀の出番が多い)
・ノミ (木皿やお盆を作るときなど、深めに彫りを入れるときに使います)
・ハンドドリル (吊り下げ用の穴をあけるのに使います。電動ドリルが壊れたので出番が多くなりました。使ってみると、こんな用途にはハンドドリルで充分です。材が割れないように、徐々に穴を大きくしていきます)
・ヤスリ類 (紙ヤスリと棒ヤスリを使います。昔の職人はあまり使わなかったようで、ヤスリを使わずに仕上げられたらと思っていますが、道は遠い。おたまのくぼみを整えるのにヤスリのかわりに小さな槍カンナを使ってみたいのですが、手に入りません。自作しようとしましたが失敗しました)



■焼き印について

作品の焼き印は、長めのプラス木ネジのアタマを使って押しています。斜めに押してしまうと「バツ」ですが、十字に見えるように押せば「救急マーク」にも見えて「ナース」にもつながります。